1950年代
終戦。明るく豊かな社会を築こうと、デザインに世界中が熱い眼差しを向けます。特に日本では、切迫した課題である商品の輸出を促進する手段として、デザインに大きな期待がよせられます。
1951年サンフランシスコ条約締結の年。レーモンド・ローウィが経済界の招きにより来日、たばこピースのデザインなどを通じて、ビジネスとしての活用を紹介します。また同年、アメリカ視察から帰国した松下幸之助が、羽田空港で「これからはデザインの時代」と叫んだという逸話も残されています。
1958年東京タワーが完成した年。通商産業省は通商局にデザイン課を設置。前年度に特許庁により創設された「グッドザイン商品選定制度」を引き継ぎながら、デザイン振興を総合的に展開していきます。同年まとめられた「デザイン奨励審議会」の答申では、「デザイン創造による輸出拡大の可能性に大きな期待」と述べられています。答申を受けて1960年には、JETROにジャパンデザインハウスが開設されました。
1960年代
日本人はひたすら働きました。高度経済成長は、私達の社会構造を根本的に変えていきます。農村から都市へと人口が移動し、都市郊外には親子4人で暮らす集合住宅が多く建てられます。洗濯機や冷蔵庫、白黒テレビなどの家電製品を中心に、国内マーケットが大きく広がっていきます。
1964年、東京オリンピックに日本中が熱狂します。この開催は国際社会への復帰の象徴でもありました。亀倉雄策がデザインしたエンブレムとポスターは幅広い支持を受け、デザインが果たす役割についての理解を、大きく高めていきました。
1969年大学紛争の年。「産業デザインを通じての輸出増強と文化生活の向上」を目指した総合的デザイン振興機関として、財団法人日本産業デザイン振興会が設立されます。JETRO「ジャパンデザインハウス」の活動を引継ぎ、「グッドデザイン商品選定制度」の委託を受け、活動を開始します。また同年、産業工藝試験所は製品科学研究所と名称変更。工業製品を対象としたデザイン研究にも取り組んでいきます。
1970年代
公害問題やオイルショックなど、経済社会の様々な歪を乗越えていくことで、生活の質的な充足が図れ、新しいライフスタイルをつくりあげていきます。そして月からみた「地球の出」の写真は、掛け替えのない星に暮らしているとの自覚を、私達に促しました。
1970年、「人類の進歩と調和」をテーマに大阪で開催された日本万国博覧会は、デザインの役割と効果を印象づけ、デザインが様々な領域で活用できることを示していきます。
73年、ICSID 国際インダストリアルデザイン団体協議会の総会とデザイン会議を日本に誘致できたことを契機に、デザインへの理解を深める運動「デザインイヤー」が展開されました。
1975年には、「地方産業デザイン開発推進事業」が始まります。県レベルの振興組織づくりと特定の産地を対象とたパイロットデザイン開発を組みわせることで、地域の企業がデザイン活用できる仕組みを整えていきました。
- 1972年 「デザイン奨励審議会中間答申-70年代のデザイン振興政策のあり方-」デザイン奨励審議会
- 1974年 「73デザインイヤー報告書」デザインイヤー運営会
- 1975年 「地方産業のデザイン開発推進事業について」通商産業省貿易局検査デザイン課
- 1976年 「昭和50年度地方産業デザイン開発推進事業報告書デザイン振興開発体制整備事業」(財)日本産業デザイン振興会地方デザイン開発センター
- 1976年 「昭和50年度地方産業デザイン開発推進事業報告書デザイン開発実施指導事業」(財)日本産業デザイン振興会地方デザイン開発センター
- 1977年 「中小企業におけるデザイン開発実態調査報告書」(財)日本産業デザイン振興会
- 1978年 「地方産業とデザイン開発(昭和52年度日本優秀デザイン商品開発指導事業報告書)」(財)日本産業デザイン振興会
- 1979年 「デザイン奨励部会報告書-今後のデザイン振興策について-」輸出検査及びデザイン奨励審議会デザイン奨励部会
1980年代
GNPは世界第二位に、そして「Janan as No.1」と呼ばれるまでに、日本は豊かな社会を築きあげることに成功します。そのゆとりから、私達の生活意識も、物質的な充足から心の豊かさへ、追いつき追い越せではなく国際的な協調へ、さらに大都市からローカルな生活へと、視野が広がっていきます。
1983年ディズニーランド開園の年、財団法人国際デザイン交流協会が大阪に誕生し、高額な賞金を掲げたデザインコンペティションと、それを核とするデザイン展示会等を展開していきます。1984年、「グッドデザイン商品選定制度」は、その対象を全ての工業製品に拡大し、輸出の振興からデザインそのものの振興政策へと転換していきます。
そして1989年は、名古屋でのICSID大会を核に、二回目の「デザインイヤー」運動が全国規模で展開されます、「世界デザイン博覧会」など401件の事業によって、国民生活、産業界、行政におけるデザインへの理解は大きく進みました。
- 1982年 「Gマーク制度25年のあゆみ」(財)日本産業デザイン振興会
- 1983年 「第1回国際デザイン・フェスティバル」(財)国際デザイン交流協会
- 1983年 「デザイン評価-魅力づくりへのアプローチ」(財)日本産業デザイン振興会
- 1984年 「産業デザインに関する調査研究報告書-機械工業におけるデザイン・マネージメント」(財)機械振興協会経済研究所
- 1984年 「日本産業デザイン振興会15年史」(財)日本産業デザイン振興会
- 1985年 「ソフト化対応のマネージメント マネージメントデザインへの展開」(財)日本産業デザイン振興会
- 1988年 「89デザインイヤー基本構想」デザインイヤーフォーラム事務局
- 1988年 「1990年代のデザイン政策」通商産業省貿易局
- 1990年 「89デザインイヤー報告書」89デザインイヤーフォーラム事務局
- 1992年 「国際デザイン交流協会10年のあゆみ」(財)国際デザイン交流協会
1990年代
バブル崩壊。出口のみえない不況が続き、「失われた10年」が始まります。
産業企業の活動が停滞する中で、地方自治体はデザインを積極的に活用していきます。1992年、名古屋市は「国際デザインセンター」の事業化に着手。96年の完成と同時期に、市立大学に芸術工学部も新設します。また東北芸術工科大学、岡山県立大学、長岡造形大学、静岡文化芸術大学など、地域自治体が推進するデザイン系大学が次々と開校されていきます。
1993年。輸出検査及びデザイン奨励審議会は、産業社会の転換に対応したデザイン政策のあり方を答申します。これを受け、日本産業デザイン振興会は「人材育成センター」を、国際交流協会は「環太平洋デザイン交流センター」を設立します。
1997年、通商産業省はデザイン関連唯一の法律であった「輸出品デザイン法」を廃止し、「グッドデザイン商品等選定制度」の民営化を図ります。これを受け、日本産業デザイン振興会は、翌年から「グッドデザイン賞」事業を創設し、これを継承します。
- 1992年 「平成3年度新産業社会基盤整備基本調査(デザイン創造支援施設関係)報告書」(財)日本産業デザイン振興会
- 1993年 「時代の変化に対応した新しいデザイ政策のあり方-中間答申-」輸出検査及びデザイン奨励審議会
- 1993年 「デザイン業振興ビジョン」(財)日本産業デザイン振興会
- 1993年 「中小企業のためのデザイン導入ハンドブック」(財)日本産業デザイン振興会
- 1994年 「地域デザインセンターの設立の策定」(財)機械振興協会経済研究所
- 1994年 「エコロジカル・デザイン研究会報告書」産業文化研究会・(財)日本産業デザイン振興会
- 1997年 「デザイン活用型産業の振興に係る調査研究報告書」三和総合研究所
- 1998年 「平成9年度電源地域におけるデザインを活用した地域活性化に関する調査報告書(概要)」(財)電源地域振興センター
- 1998年 「デザインビジネス新領域開拓へ向けて」(財)日本産業デザイン振興会
2000年代
インターネットの力が、産業の改革へさらには生活や社会全体へと及び始めます。デザインを商品差別化の道具ではなく、人々を結びつけ、新たな創造を生み出していく思考ととする考えも登場してきました。
2003年、経済産業省は「戦略的デザイン活用研究会」を設置、「競争力強化に向けた40の提言」を発表。これを受け振興会は、デザインコンシャスな経営者とその企業を表彰する「エクセレントデザイン賞」を開始します。また同年振興会は、日本アセアンセンターと共同して、デザインを通じてアセアン各国との連携を強化する「グッドデザイン賞アセアンセレクション」を展開します。
2006年、日本のデザイン振興活動を支えてきた「グッドデザイン賞」は制度発足50周年を迎えました。翌年振興会は東京六本木の「東京ミッドタウン」に移転、日本グラフィックデザイナー協会や九州大学とともに、様々なデザイン活動との連携拠点となる「デザインハブ」を開設します。
- 2000年 「ユニバーサルデザインに関する調査研究」(財)産業研究所
- 2002年 「デザインビジネスルール(デザインの取引慣行)改善に向けてのビジョン作成」全国中小企業団体中央会、日本デザイン事業協同組合
- 2003年 「デザインはブランド確立への近道-デザイン政策ルネッサンス-競争力強化に向けた40の提言」経済産業省製造産業局
- 2004年 「次世代デザイン人材育成に関するビジョン策定」(財)日本産業デザイン振興会デザイン人材開発センター
- 2005年 「デザイン・エクセレント・カンパニー賞」ダイヤモンド社
- 2007年 「Gマーク大全 グッドデザイン賞の50年」(財)日本産業デザイン振興会
- 2009年 「意匠制度120年のあゆみ」特許庁意匠課