「デザイン振興政策アーカイブ」は、収集された資料文献をもとに、行政や振興活動の歩みを振り返り、そこから今日の課題を探りだす研究活動を展開してます。この「研究フォーラム」では、「アーカイブ」が中心となっておこなった、1)デザイン振興活動を担われた方々へのインタビュー調査、2)学会への発表や学術論文の執筆、3)研究セミナーやシンポジュームの開催等の成果を、順次掲載していきます。
- 2024.12.25 「日本デザイン学会・プロモーションデザイン研究部会(代表青木史郎)」は、デザイン学会誌特集号「インハウスデザイナーが生みだした資産」作成にあたり、1990年代のデザイン行政とデザイン振興政策について、それらの活動を担った当事者へのインタビューを収録しています。宮崎修二「1990年代デザイン行政のパラダイムシフトー生活者。企業活動。地域振興 3つの視点」、青木史郎「デザイン領域の拡大と信仰活動の自立-1990年代の日本産業デザイン振興会」。企業のデザイン活動と、こうした行政振興側の動向を重ね合わせると、1990年代デザインの歴史的意義がより立体的に理解できます。 デザイン学研究特別号 21巻(2024)1号
- 2024.12.25 「日本デザイン学会・プロモーションデザイン研究部会(代表青木史郎)」は、日本のデザイン先進企業におけるインハウスデザイナーの活動とその今日的意義について共同研究を進め、2024年12月にデザイン学会誌特別号「インハウスデザイナーが生みだした資産ー新しい領域拡大をめざした1990年代」を刊行しました。この特集号では、河原林桂一郎「拡大するデザイン領域のデザインー1990年代の東芝デザインの変容」、大澤隆男「協創価値をデザインするー日立のコミュニケーション&エクスピリアンスデザインの取組み」など、当時のデザイン部門長による学術的研究が掲載されており、この時代に展開された活動が、今日のデザインを切り開く胎動的活動となったことが、あらためて理解できます。 デザイン学研究特別号 21巻(2024)1号
- 2024.10.30 2024年10月5日に開催された芸術工学会・2024年秋期大会(実践女子大学)において、青木史郎と黒田宏治はデザイン政策研究の一環として、「名古屋市によるデザイン都市政策の展開と今日的意義 (1)」を発表しました。名古屋市は、1989年に開催されたICSIDデザイン会議の誘致を契機に、「デザインを柱とした都市デザイン政策」を確立し、以降40年以上にわたり展開しています。この発表は、デザイン政策開始の背景と、1990年前後の展開について評価したもの。今後も名古屋市のデザイン政策についての研究を継続していていきます。 芸術工学会誌 No89,Nov. 2024
- 2023.10.01 2023年10月に、国際デザイン団体WDOが主催する「世界デザイン会議東京2023」が開催されます、それに先だち、国際デザイン研究フォーラムと同デザイン会議実行委員会は、「1973/1989 ICSID会議とDesign Yearが残したもの」と題するシンポジュームを、7月16日に開催。その報告書が完成しました。ここでは1989年に行なわれたデザイン会議を中心に、「国際デザイン博覧会」など、ホスト役を努めた名古屋市の活動展開と、通商産業省が提唱推進した「89デザインイヤー」を担った方々に、その背景と成果、さらには今後の課題をお聞きしています。スピーカー:田中一雄、藤本清春、諸星和夫、山村真一、西野輝一、宮崎修二、企画進行:青木史郎、黒田宏治。
- 2023.09.30 「日本デザイン学会・プロモーションデザイン研究部会」は、2023年6月25日に開催されたデザイン学会春期大会の中で、「企業内デザインが築きあげてきた資産」をテーマとするセッションを行いました、これは、日本の大手製造業のデザイン部門が展開してきた「よい商品を生みだすための調整的活動」、いわば「裏方」的な活動に着目したもので、往時のデザイン部門をリードされてきた方々をお招きし、その実態と今日的課題を探訪しています。スピーカー:安齋利典、河原林桂一郎、大澤隆雄、蓮見孝、企画進行:青木史郎、黒田宏治。なおこの研究部会は、このテーマに沿って、特に「1890年代」に焦点を当て研究を継続していきます。
- 2023.07.10 1973/1989 ICSID デザイン会議とDesign Yearが残したもの。2023年10月、日本デザイン振興会が中心となり、「WDO世界デザイン会議東京」が開催されます。 これに先立ち、アーカイブプロジェクトなどは、1973年そして1989年に開催されたICSID デザイン会議と、それを核に展開された Design Year 運動が、日本のデザインの発展に果たした役割を検証するシンポジュームを開催します。ここでは、特に1989年に名古屋で展開されたデザイン会議やデザイン博覧会を担わた方々をお招きし、当時を熱くかたっていだく予定です。 シンポジュームに関連する資料を、「アーカイブ」から抽出しました。ご一覧ください。
- 2023.03.31 「デザイン振興政策アーカイブ」は、蓄積された文献資料をもとに研究活動を進めています。その2番目の学術論文(論説)「地方産業デザイン開発指導推進事業の政策評価」が、2023年3月31日に発行された「芸術工学会誌No,86」に掲載されました。この論説は、青木史郎と黒田宏治を中心に執筆されたもので、事業が実施された石川県山中、佐賀県小城、岐阜県飛騨について新たにインタビュー調査をおこない、これを踏まえて同事業の成果を多角的に検証したもの。この事業は、産地のデザインについての理解とその方法論の習得を進め、新たな産地リーダーが登場を促したことで、その後に独自商品の開発や産地ブラントを導く契機となった。しかしその一方、行政は事業を検証せず、その成果を定着できなかったなどの課題も指摘される。
- 2022.11.19 2022年11月19日に開催された芸術工学会・2022年秋期大会(千葉大学・墨田キャンパス)において、黒田宏治は「産業・職業分類にみるデザイン概念の変遷」を発表しました。産業・職業の標準的な概念は日本標準産業分類、日本標準職業分類で規定されていますが、デザイン分野での捉え方とはギャップも感じられます。本発表では、それら標準分類等の中でデザイナー、デザイン業はどのような概念で捉えられてきたか、そして現在ではどのように概念規定されているのかを紹介しています。
- 2022.11.19 2022年11月19日に開催された芸術工学会秋期大会(千葉大学・墨田キャンパス)において、青木史郎は、「地方産業デザイン開発推進事業における『すぐれたデザイン』について」を発表しました。この事業は1975年から86年にかけ、通商産業省デザイン課が企画推進し、全国32の道県で実施された大規模な事業で、産地意識の変革の契機となるなど、大きな影響を与えました。ここでは行政側が地場産業に導入を図ろうとした「すぐれたデザイン」の概念が「インダストリアルデザイン」であることを明らかにするとともに、地域での実践とその効果を振り返ることで、行政側が意図した「インダストリアルデザイン」による産地の活性化と近代化」には限界があったことを指摘していきます。
- 2022.06.25 「プロモーションデザイン研究部会」は、プロモーションという視点からデザインを捉えることで、様々な課題を発掘していこうとする研究サークル。2022年6月に開催されたデザイン学会春季大会において、「インダストリアルデザインの矮小化を考える」と題するトークセッションを行いました。ここでは「幅広いニュアンスで理解されていた導入当初のインダストリアルデザインが、次第にものづくりのデザイン、プロダクトデザインとして狭く受け止められていったことが、ポスト産業社会におけるデザインの発展を阻害した」との仮設をもとに、成長期のデザインを担った方々(堀越敏晴、田中一雄、蓮見孝)をお招きし、青木史郎と黒田宏治がホストとなり発表と討論を行なっています。